海外の働き方事情 ~日本の働き方を考える~

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日本では考えられない自由なヨーロッパの働き方

法律や動労組合で労働者の権利や主張などが守られている西ヨーロッパでは、皆、自分の生活に合わせたワークスタイルをとるのが普通です。

日本のように仕事を理由に家族や私生活を犠牲にすることは、「悪しきこと」とされる傾向があります。こちらの人達は、働くことにモチベーションはあるのですが、皆、契約以外のことはしようとはしない傾向があります。働き方の基本は、「ギヴ・アンド・テイク」なので、それなりの見返りが期待できないことには、あまり協力的ではありません。

それでも、国というのはそれなりに回るものです。
日本人もこのあたりで少し認識を改めたほうがよさそうな、少しショッキングな欧州の事情をお伝えします。

EU諸国は金曜日は半ドン

ヨーロッパで働くと、当然、隣国との時差の問題があります。イギリスだけが西ヨーロッパより1時間(あるいは2時間)遅れているので、電話をする時は時差を気を付けなければならないのですが、特に週末の金曜日の午後が要注意です。

ドイツをはじめ、北欧などでも多くの企業が就業時間が4時で終了するのです。イギリス時間の昼休み(12時半~午後2時半のうち1時間)が終わってデスクから電話をしようとしたら既に午後2時45分、完全にアウト、なんてことがよくあります。

ドイツなどは、週末は半日しか働かない社員もいたりするので、捕まえるのが大変です。

イタリアのジェノアなどは、なんと月曜日までが週末です。土、日、月(午前)まで街中のほとんどの店やレストランのシャッターは下りたままなのです。それを知らずに週末にジェノアに行ったので、まる2日間、楽しみにしていたイタリア料理にもありつけず、街を徘徊していた思い出があります。

物価が安い海外に住んで働く

昨今のロンドンは住宅価格の高騰が進み、労働者は郊外に家を購入するようになりました。

郊外から通うと、通勤時間も交通費もかかります。イギリスは、交通費が異常に高いことで知られている国ですが、日本のように交通費支給制度はないため、みんな交通費の節約をしようと四苦八苦しています。

リモートワークが主流のIT企業の社員の中には、週に1度出勤とか月に3,4度出勤するだけで、残りの日はリモートで仕事をしている人が多いようです。

極端な例では、自宅をスペインのバルセロナやフランスのカレイ付近の田舎町に家を買って、飛行機やユーロスターでときどきロンドンの会社に出社してくるという優雅な人もいると聞きます。飛行機やユーロスターは、早朝や夜遅くなら格安チケットが手に入るので、それほどのコストにもならないのです。

物価も安く、気候も居住環境もイギリスより恵まれた外国に住んで、ロンドンの企業から収入を得るとはいかにも斬新な発想で目から鱗とはこのことです。

ワールドカップ期間は、デスクで観戦もあり

今年も4年に一度のワールドカップが行われますが、フットボールの発祥地イギリスのフットボール熱は、いわずもがな熱狂的です。ワールドカップ期間中、イギリス人(特に男性)は老いも若きも浮足立っているように見えます。

職場でも、当然仕事などそっちのけでパブに試合をチェックに行ったり、デスクの下でこっそり携帯電話を出して試合を観戦していたりします。そういう状況が続くので、企業側もこの期間だけは大目にみてくれます。

私がいた日系企業では、ワールドカップ期間中、イングランドの試合と日本の試合だけは、全社員が観戦を許されていました。一階、正面玄関のホールに掲げられた大スクリーンを眺めながら、同僚とドリンク付き(アルコール類を含む)で観戦しました。

就業時間中のことでしたが、午後4時近くでしたし、お客さんも招待してのイベントということで会社としての対面は一応保っていたようです。非日系の企業などでは、公園のようなスペースにオーロラビジョンを設置したところもあります。おそるべし、フットボール狂イングランド、というところです。

家庭の事情で、遅刻、早退、休みは普通のこと

朝、出社してEメールをチェックしていると、「妻が病気なので、本日は欠勤します。」というメッセージが入っています。
イギリスでは、本人だけではなく家族が病気でも休むことができるようになっているのです。

ちなみに、減俸にもなりません。奥様(旦那様)がインフルエンザで倒れて、小さなお子さんがいるような場合は、みんな、よく休みます。

子供が熱を出して、休むこともあります。奥様も職業を持っている、いない、にかかわらず、その日の状況によって二人のうちどちらが休むのかが決められるのでしょう。

そんな様子なので、イギリス人の欠勤(主に病欠)日数は数年前まで年間平均1週間という統計がありました。しかし、現在では、リモートワークなどの普及が進んで在宅で仕事をしているせいか、昨年は、4.3日まで落ちています。

12月は年に一度のクリスマス、10日以降は仕事にならない

イギリス人が浮足立つのは、ワールドカップだけではありません。毎年、クリスマスや夏休み、イースターに入る時期には、みんな入れ替わり次々に休暇に入るため、仕事が進みません。12月に入ると、各企業ごとのクリスマスパーティや部署ごとのクリスマスランチなどが盛んになります。

毎年12月10日前後には、会社主催のクリスマスパーティ(忘年会)が予定されるので、みんなそわそわとして、仕事に身が入るわけがありません。

一流ホテルのバンケットルームやレストランで行われるパーティは、出席者が全員正装でお得意様もお迎えして盛大に行われることもありますが、部署内だけので少人数で食事をするパーティもあります。

とにもかくにも、イギリスの12月は公私ともにパーティ三昧のシーズンで、毎年、年明けまで仕事にならないものなのです。イギリス人の働きぶりをみていると、「なんだか楽しそうで、いつ仕事をしているのやら」と心配になることがあります。なんと「イギリス人はホリディとホリディの合間に仕事をしている」という冗談もあるほどです。しかし、よく考えれば「働くときはキチンと働いて休む時は休む」というメリハリをつけているだけのことなのでしょう。

仕事が終わらなければ、残業代もつかないのに夜遅くまで残って仕事を片付けて帰るような、責任感の強い人だって意外に多いのです。ただ、彼らにとっての生活信条は「人生を楽しむこと」であり、生活の軸は「家族との生活」なので、日本人のようにすべてを犠牲しにてまで働こうという気は全くないのです。だから、ホリディシーズンやクリスマスには、おもいきりはめをはずして楽しもうとするのでしょう。

イギリス人にとって、「労働は、あくまで自分の生活を維持する報酬を得るため」という考え方が働く理由の根底にあるので、基本的に必要以上の手間をかけずに効率を上げたい、といつも考えている(はやく言えば、自分たちの得にならないことには手を抜く)ところがあります。

ヨーロッパでは、職場でもどこでも日本のような親切で懇切丁寧なサービスをしてもらえることは、ほとんどありません。
ただし、店内で物を買おうかどうか迷っていると、店員が話しかけてきて、「それ、○○日から△△%安くなるから、今日買わなくてもいいじゃない?」などと言ってきたりします。

これを、客に対するサービスととるか否か、微妙なところですが、私はうれしいです。やはり、日本人が会社に対して持っているような忠誠心は、彼らにはないということの現れなのでしょうか。

こちらの国では、「サービスはひとつの商品」として捉えられているので、「サービス料」というのは「施してもらったサービスに対して相当の料金」という概念です。質の高いプロフェッショナルなサービスを受けたいなら、それなりの料金が発生するのは当然だと考えるべきなのでしょう。

人手不足やコスト削減を迫られる近ごろの日本のサービス業でも、そういう発想を少しばかりとりいれていった方がいいのかもしれません。たとえ、サービスにお金を払うようになったとしても、やっぱりあの日本の心地よい接客だけは無くなってほしくない、と思っているのは私だけではないはずですから。

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